ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」

音で楽しむ

  1. お人よしな農夫 ネモリーノ「なんて美しいんだ、なんてかわいいんだ」 (テノール ベニャミーノ・ジーリ)
  2. お人よしな農夫 ネモリーノ「人知れぬ涙が」 (テノール ベニャミーノ・ジーリ)

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あらすじ

(以下、す~さん(ライター)の記事です。)
 農場主の娘・アディーナが村人たちに『トリスタンとイゾルテ』の物語を読み聞かせています。お人よしな農夫・ネモリーノは彼女に淡い恋心を抱いていました。そんなある日、女好きの軍曹・ベルコーレがアディーナに求婚。それを見ていたネモリーノも彼女に愛を告白しますが、相手にされません。

 彼女をどうしても振り返らせたいネモリーノは自称「名医」の薬売り・ドゥルカマーラに、イゾルテ姫の愛の妙薬を求めます。ドゥルカマーラは愛の妙薬を売るのですが、実はその中身は安いワインなのです。そのことを知らないネモリーノは(偽の)妙薬を飲んで、再びアディーナに言いよりますが、怒った彼女はあてつけにベルコーレの求婚に応じるのです。

 落ち込んでしまったネモリーノにドゥルカマーラは「もう一度、愛の妙薬を飲めばもっと早く効果が現れる」とそそのかします。しかし、お金を持っていないネモリーノは軍隊に入り、再び愛の妙薬(もちろん偽物)を手に入れるのでした。

 村娘たちはネモリーノが大金を手に入れるとのうわさを聞きつけ、彼をちやほやし始めます。それに嫉妬したアディーナに薬売りのドゥルカマーラは、ネモリーノが入隊して(=自由を売って)まで愛の妙薬を買ったことを告げます。ネモリーノの愛の強さに気がついたアディーナは入隊契約書を買い戻し、彼に愛の告白をして、二人は結ばれるのです。

す~さんのコラム++++++++++

 '災い転じて福となす。'
 そんな感じでしょうか。劇を見ながらふと頭に浮かんだのが、この言葉です。

 「愛の妙薬」が災いであり福でもある。妙薬だと信じて飲んだワインのおかげで、ネモリーノは、アディーナに対して強気になりました。そのおかげで、彼女はベルコーレの求婚に応じるのですが、焦ったネモリーノは再び妙薬を手に入れる。そして、グッドタイミングで「ネモリーノの伯父が亡くなり、その資産を手に入れた」という噂が立ち、村娘たちにちやほやされ、妙薬の効き目が出たと勘違いするネモリーノ。嫉妬したアディーナでしたが、ネモリーノが妙薬を買うために入隊したことを聞かされ、彼への愛に気づき、告白するのです。

 かわいそうなのはベルコーレです。これって婚約破棄!?現代なら訴訟ものですよ。
 まあ、彼も彼で「女好き」ということなので、よしとしましょう。そのまま結婚していたら、アディーナが苦労したでしょうね。

 私は素人なので、曲がどうこうは言えないのですが、話の中身については「実に幼い主人公二人の話だな~」と思いましたね。純粋で無垢。「愛の妙薬」の存在なんて、普通信じないでしょう?その点、アディーナはネモリーノに比べて少し大人なのですが、強気に言いよるネモリーノに腹を立ててベルコーレの求婚を受け入れる…というのは、やはり子供っぽいと思います。
 しかし、そこがこの喜劇の面白い部分でもあるんですよね。

ネモリーノ役のルチアーノ・パヴァロッティはオペラも見たことがない人でも知っていますよね。そう!トリノ五輪で「トゥーランドット」を歌っていた人です。ちなみに、トリノ五輪、女子フィギュアスケートで金メダルに輝いた荒川静香選手がフリーの演技で用いたのが「トゥーランドット」でした。

さて、話を戻しましょう。パヴァロッティは世界三大テノールのひとり。やはりいつ聴いても、彼の声には人を引き付ける魅力がある・・・。そう思います。
(実は筆者は、中学・高校時代に合唱と独唱を少しかじっていたので、パヴァロッティの歌声は聞いたことがあるのです。…もちろんCD音源ですが^^;)
劇中の「ひとしずくの涙が」は特に好きな曲です。
完全に聞かせる歌です。正直言うと、私は歌詞優先でなく曲優先+歌手の声の好みを優先して音楽を聞くので、この曲はガッツリそれに当てはまっています。歌詞が分からなくても、その曲の意味が伝わってくる。伝えることのできる歌手が本物なのだと思います。パヴァロッティの歌は圧巻です。
それにしても、曲が終わってからの長時間の拍手はすごい…。

また、オペラの面白いところは“しゃべるように歌われる”ところ。私も、そこそこ演劇やミュージカルは見たことがあるのですが、それらは完全に演技と歌は別物だと思います。内容に沿ってはいても、台詞はセリフ、歌は歌。オペラはすべてのセリフがメロディーにのっている。そういうところが私にとっては新鮮です。オペラはなかなか見る機会がありませんからね。
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